登壇の可能性をあげる!カンファレンスプロポーザルの書き方のススメ

おすすめなカンファレンス用プロポーザルの書き方

こんにちは、builderscon 主宰の牧です!今回は builderscon tokyo 2017一般セッション公募開始に合わせて、「カンファレンス用プロポーザルの書き方」について、私なりの知見を共有させていただきたいと思います。

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技術カンファレンスに登壇したい!そう思ってプロポーザルを応募したものの、採用されずにガッカリしてしまう… そんな経験をしたことがある技術者の方は多いと思います。

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私はこれまで自身でも様々なプロポーザルを応募してきましたが、さらに審査側として膨大な数のプロポーザルの取捨選択をしてきました。カンファレンス主催者としてはなるたけ多くのおもしろいプロポーザルを採用したいと考えており、審査時には長い時間をかけ、悩みながらプロポーザルを吟味しています。

ですが、審査をしていると実はかなりの数のプロポーザルは内容を吟味する以前に落選が決まってしまう事があります。

プロポーザルのトピック自体は興味深いかもしれないのになぜこんな事が起こるのでしょう

このエントリではプロポーザルを送ったのになかなか採用されないな… という方に向けていくつかのティップを共有したいと思います。

なお本稿ではなるたけ普遍的なエッセンスを抽出して伝えているつもりですが、基本的に私が主催側として参加してきたカンファレンスにおいての基準での話となりますので、実際には各カンファレンスによって差があるかもしれません。

選ばれるプロポーザル、選ばれないプロポーザル

選ばれないプロポーザルのほとんどは実は内容で落とされているのではありません。選ばれないプロポーザルのほとんどはそもそも内容を吟味する以前に「どんな内容なのかよくわからない」という理由で採用が見送られています。

これに当てはまるプロポーザルの特徴としては:

  • 紹介されているトピックが読者にとっても当たり前だと仮定している
  • 紹介されているトピックがなぜ必要なのかを伝えていない
  • トピックの代わりにポエムを書いている

というあたりがあげられます。なぜこれらポイントが重要であり、なぜこれらに気を遣わないとハンデになってしまうのでしょう。

同じ土俵にさえあがれない

審査員がプロポーザルを審査していく際にはたくさんのプロポーザルを読んでいます。個人的な経験で言うと40個前後の枠にたいして最大で180個のプロポーザルに目を通しました。

たくさんのプロポーザルを比較する場合、まず全てのプロポーザルに一通り目を通した後、まず明らかに採用したほうがよいと思われるプロポーザルだけ選出され、残った物からさらに上位のものを抜き出すというプロセスを繰り返す事になります。

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このようなプロセスでは当然ですがスッキリ意味がわかるプロポーザルのほうが高得点を得たり先に採用が決定となりがちです。伝えたい内容がよくわからなかったり、審査員が知らない技術について解説するのに、その説明を端折ってしまっているようなプロポーザルは採点そのものも保留になり、繰り返し次のラウンドでの再審査にまわされます。

しかし再審査にはいくつかハンデがあります。例えば一回目のラウンドで全てのセッションの枠が埋まってしまった場合はそもそも再審査する必要がありませんので、自動的に不採用が決定してしまいます。

枠の数がまだあっても、すでに少なくなった状態での審査となりますので、例えば1時間枠が全て決まってしまった後に1時間枠を希望されているプロポーザルが採用されるチャンスは格段に低くなります。

このように、最初にプロポーザルを読んだ際にわかりにくい文章をプロポーザルに載せてしまった場合、それだけでもすでに他のわかりやすいプロポーザルとそもそも同じ土俵にさえ上がれないと考えられます。

観客の事を考える

通常は審査プロセスの中で枠数以上の採用候補プロポーザルが最初選出されます。この中からさらに審査が行われ、枠数に合うように調整がされます。

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同じ程度に面白そうな複数のプロポーザルの中から採用・不採用候補を選出する際に考慮される事項のひとつとして、「このプロポーザル採用としたして、観客はこのセッションを聴講しにいくだろうか?」ということです。つまりあなたのプロポーザルは審査員の審査ののち、もう一度観客による審査を経て、その後ようやく聞いてもらえる、ということです。

審査員はある程度の知識と興味を持ってあなたのプロポーザルを読みます。ですが、観客の場合はどうでしょう?

断言しますが、カンファレンスの参加者はセッションの情報を読もうとしても、斜め読みで大枠が理解できなかった場合、理解することをそもそも諦めます。もう一度読んで分からなかったことをちゃんと理解しよう、と努める人も当然いますが、大多数の人は一読して得られる情報のみを使って自分の行動を決めていきます。

それでは参加者が求めている情報とはなんでしょう。カンファレンスの参加者がプロポーザルに期待することは主に以下の二つだと考えています:

  • そのセッションを聴講することによって得られる新しい情報
  • そのセッションを聴講することによって解いてくれる疑問・問題

これらの事がわかりやすく記述されているプロポーザルはカンファレンスの参加者にとっても利益が見込めるので、他のプロポーザルより採用されやすくなります。

文章力を補うための技術

「カンファレンスのセッションなんて内容が一番重要だろう!」という意見は当然あるでしょう。ですが前述した「内容を吟味する以前に落選が決まってしまうプロポーザル」は読ませることに注意を払っていないというだけで、そのおもしろい内容が審査員や観客に伝わる前に大きなハンデを背負わされているため採用される可能性が格段に低くなっているのです。

プロポーザルの内容(ネタ)はもちろん大切です。しかしそれより前に重要な事は単純に審査員および観客にそのプロポーザルを読ませるための技術です。

文章力を「書式」でカバーする。

それでは具体的にこの技術とはなんでしょう。もちろんそれは「文章力」という読ませる力のことです。

ですが皆様は(多分)技術者であり、文章が得意でないという方も多いでしょう。この理屈だと文章が苦手な技術者は軒並み不利ということに思ってしまうかもしれませんが、実はこのハンデを埋めるために存在するのが「書式」というものです。すなわち、一定のフォーマットに沿って書かれた文章の事です。

みんなと同じ書式ではオリジナリティが出ないと感じるかもしれません。しかしプロポーザルに必要なのは「わかりやすく」「必要な最低限の情報」を読者に届けることであって、美しい文章ではありません。書式に従うと機械的に必要な情報を埋めることが可能になるため、皆同じ土俵で戦うことが可能になるのです。

文章力に自信のない人、文章を考える作業をなるたけしたくない人は素直に書式に従いましょう。

重要なことなのでもう一度言います:素直に書式に従いましょう!

具体的な書式

以下にそういった書式のうち、筆者がおすすめするものを紹介します。

なお、この書式を絶対に踏襲する必要があるというわけではなく、以下の書式は「このようにすれば審査員側として必要充分な情報を全て押さえる事ができる」という一例です。読み手に伝わるように書けていればこの書式を使う必要は一切ありません。以下の例がしっくり来ない場合は他の書式を是非探してみたり、考えてみたりしてください。

1. プロポーザル概要

最初の段落にはプロポーザル全体の概要を、簡潔に書きましょう。この段落では必要なキーワードや概念を使ってざっくりどんな話をするのか書きましょう。

この段落で全てがクリアになる必要はありませんが、どのような話をして、どのような結果が得られる予定なのかを明記しましょう。

2. 問題提起

次に前提条件を含め、問題提起をしましょう。この部分は、読者があなたが直面した問題についての知識がない、と仮定して書きましょう。

3. 考察

前項を受けて、それを解決するのにどのような解決策がありえるのか、もしくはどのような効果があれば問題が解決できるのか、などを読者に説明しましょう。

4. 提案

最終的にどのような解決策がありえるのかをここで紹介しましょう。

5. その他

もし他に提示しておきたいコンセプトや次項があれば、箇条書きで書いておきましょう。

まとめ

以上あくまで一例です。ここで示した例はかなりシンプルなものですが、この流れを踏襲するだけでもスッキリとした構成の文章を作れると考えています。プロポーザルに書く内容に困った際はこのようなテンプレートを満たすつもりで文章を書いていくと、それだけで採用されるチャンスがぐっとあがるはずです。

皆様も是非わかりやすい文章を書くことを意識して、プロポーザルが選ばれる確率をたかめましょう!